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「核実験の放射能で死産が増えた」は真実かデマか

「大気圏内核実験によって、放射能が撒き散らされ、死産が増えた」というデータがある。

4gcyc6.jpg

これがもし正しければ、放射能の恐ろしさを如実に示していると言えるだろう。
今、原発周囲のみならず、関東圏にも放射性物質が降り注いでいる。
原発周辺だけでなく、東京の妊産婦も遠くへ避難させなければいけない!

しかしこのデータ、本当に放射能と死産の関連性を示しているのだろうか?

なお、この検証をするにあたって、「Take a Risk: 林岳彦の研究メモ 意外な展開:自然死産率の生データを見てみた」(http://d.hatena.ne.jp/takehiko-i-hayashi/20110405/1301973113)を大いに参考にさせて頂きました。
この場を借りて、お礼させていただきます。

このグラフの元になったデータは、政府が発表しているものなので、誰でもダウンロードできる。

厚生労働省 平成21年(2009)人口動態統計(確定数)の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei09/xls/hyo.xls

さて、一つ一つ検証していこう。

まず、基本的な間違いから。

そもそもこのグラフのタイトルからして間違っている。

このグラフで示されているのは「自然死産率」ではない。「自然死産数」である。

割合でなく、人数なのだ。

そんな細かいことを!と思うかもしれないが、これは非常に重要である。

なぜなら、その年に生まれる子供の数が多ければ、当然、死産の子供も多くなるからだ。

逆に、現在のように生まれる子供が少なければ、死産の数も少なくなるのが当たり前だ。

したがって、こういうデータを示すならば、「出産のうち、死産だった割合」を調べなくてはいけない。

その点で、このグラフはいきなり落第である。


次に、グラフの中に黒い線で書かれている「想定死産数」だが、これもおかしい。

1950年ぐらいの所から、1990年ぐらいに、なだらかな曲線が引かれている。

でも、よく考えてほしい。

何を根拠に、この曲線を「想定」しているのだろう??

死産が減っているのは医学の進歩や、衛生状態の改善、栄養状態の改善などが大きいと思われるが、それは毎年毎年、同じ割合で向上していくものではない。

だから、1950年あたりのラインと、1990年あたりのラインを単純につないだその曲線に、実際の死産の数が一致してくるとは限らないのだ。

もしかしたら、放射能の影響が全くなくても、この「想定死産数」の黒線とはかけ離れたグラフになったかもしれない。少なくとも、それを論理的に否定することはできない。


早くもケチがついてしまったこのグラフだが、本当の「自然死産の割合」(数ではない)のグラフを造ったので見てほしい。

データの元は先ほどの厚生労働省 平成21年(2009)人口動態統計(確定数)の概況である。

この自然死産の割合は、全ての出産(死産を含む)の何パーセントが自然死産であるかを示している。

もちろん、自然死産なので、人工中絶は含まない。

20110412231147e53.gif

やはり、大気圏内核実験が盛んだった1961-1962年がもっとも自然死産の割合が高いのだ!

と、早トチリしてはいけない。

さっき話題にした、「想定死産数」の曲線を引くために、一番最初に示したグラフでは、1950年ごろのデータをなぞるようにしていた。だからもっともらしく見えたのだ。しかし、このグラフでは1950年から1961年まで、一貫して割合が増加しているのだ!

つまり、さきほどの「想定死産数」の曲線は、このグラフでは引くことはできないのである。

(もしかしたら、「想定死産数」の曲線をうまく引くために、わざと「死産率」ではなく「死産数」にしたのかもしれない)


さて、このグラフで、もっとも自然死産の割合が高いのは1961年である。

そこで、環境における人工放射能の研究を見てみる。

image002.gif

これは、簡単に言えば、どれだけの放射性物質が日本に降り注いだかを示すグラフだが、確かに1960年代はそれが多いことがわかる。

でも・・・一番多いのは1961年ではない!
むしろ1961年は他の年よりやや少ないくらいで、最も多いのは1963年である。

微妙なズレであるが、死産の割合が最も多い時期より遅れて放射能のピークが来る、というのは何だかおかしい話に思える。

おかしいと言えば、なぜ「死産」だけを問題とするのか?という疑問がある。

そもそも、「死産」とは妊娠12週以降に死児を出産することを指す。

いっぽう「周産期死亡率」という言葉を聞いたことのある方も多いと思う。

これは、出生1000人のうち「妊娠満22週から出生後満7日未満」に亡くなった子供の割合である。

20110413001303647.gif

放射能の害を調べるとき、妊娠12週からの死児の出産を指す「死産」のみならず、妊娠28週~生きて生まれたがすぐ亡くなってしまった子供の数を含めても、特におかしくはないだろう。
しかし、これを含めると、データが全く違った風に見えてくるのだ。

グラフを出してみよう。なお、現在の周産期死亡は「妊娠満22週から」だが、以前の日本では「妊娠満28週から」だったので、全てのデータをこの「28週以降」で揃えてある。
やはりこれもデータの元は先ほどの厚生労働省 平成21年(2009)人口動態統計(確定数)の概況である。

2011041223402902b.gif

あれ?
あれれ??
あれれれ???
周産期死亡率で見ると、先ほどの「1961年のピーク」が消えてしまうのだ!!!

1957年あたりから、ひのえうまの影響を除けば、現在までずーっと周産期死亡率は減り続けている。

大気圏内核実験が盛んだった時期も、グングン減っている。

これは、この時期も、元気な子供が生まれる割合が毎年増えていたことを意味する。
おかしいじゃないか。


要するに、放射能の影響があるように見えるのは、「自然死産」のデータのみ、もっと詳しく言えば「妊娠12週-妊娠28週の自然死産」のデータだけなのである。

放射能の影響は、妊娠28週までしか出ないのだろうか?

確かに、放射線の影響は妊娠初期のほうが大きい。だから、28週以降でなく、12週以降のデータのほうが放射線の影響を強く受けているのだ、と思われるかもしれない。

ところが、「Take a Risk: 林岳彦の研究メモ 意外な展開:自然死産率の生データを見てみた」http://d.hatena.ne.jp/takehiko-i-hayashi/20110405/1301973113で解説されているところによれば、そうでもないらしい。

要約すれば、最初に示したトンデモ反原発派が「自然死産の増加」としたグラフは、「1960年代の死産が多いのではなく、50年代の死産が少なすぎる」ために、60年代の死産が多く見えるだけだったのではないか?」ということである。

20110405091928.png


(図は、「Take a Risk: 林岳彦の研究メモ 意外な展開:自然死産率の生データを見てみた」より引用させて頂きました)

その証拠に、1950年の「妊娠12週-28週の自然死産率」は2003年とほぼ同じなのである。

衛生状態も栄養状態も悪かった終戦後5年後の死産率が、現代と同じということがありうるだろうか?

同様に、1955年の「妊娠12週-28週の自然死産率」は1990年代とほぼ同じである。

これもありえない。

結論:1961年をピークとした自然死産の増加は、大気圏内核実験の影響ではなく、1950年代の死産の届出があまりにも少なすぎたために生じた、統計上の錯覚である可能性が高い


追記1(2012年10月20日)
他の検証記事と体裁を揃えるため、記事の文体・表現を一部修正しました。
また、私のブログ保存のミスにより、頂いたコメントが失われてしまいました。お詫びいたします。
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Author:原発懐疑派
科学的・論理的に原発の廃止を目指しています。
事情があって一時ブログを閉鎖しましたが、再開します。

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